ぼちぼちインド日記を再開する。書けそうな日からピックアップして書いていくスタイルにしよう。
いま私はハイデラバードというインドの北東の都市にいる。ここはかなり都会の方らしく、たくさんの車とトゥクトゥクが排気ガスを出しながら往来している。4日前までいたブッダガヤは古き良き田舎という感じで、交通量もこれほど激しくなく、空気も人もどこか泰然としていた。それに対してハイデラバードは歩くだけで東京にいるのかと錯覚してしまうぐらい車も人も店も多い。
その分、デパートなんかはどれも近代的で、巨大で、ぴかぴかした雰囲気をたたえている。インドでぴかぴかした建物、人、商品に囲まれることができる機会は貴重だ。ぴかぴかがどうしても恋しくなり、この日はデパートを2軒も梯子してしまった。自身の姿が反射するくらい磨き込まれた床にホッとする。清潔な映画館で清潔な映画を見て、清潔なショップで清潔な買い物をして、清潔なフードコートで清潔な食事をとる。日本のそれとほぼ変わらない生活に、身も心も意志に反して安心するのを感じる。清潔に安心する心なんて唾棄すべきと常に考えている私の意志に反して、私の身体が清潔さに芯からほっとしているという、その矛盾を美しく感じた。
フードコートでは鉄板で出てくるチキンステーキを食べた。日本のファミレスではお馴染みのこのジュージューと鳴く鉄板を久しぶりにみて思わず頼んでしまったが、出てきたものを見てたまげた。
なんか、夢みたい。
まずビジュアルに関して述べよう。日本よりアチアチに鉄板が設定されているのか、肉から出る熱気が尋常ではない。湯気がゆらゆらを通り越してぬらぬらしている。馬鹿みたいな量の細長いコメとスパイシーなチキンステーキ。絶対いらないだろというポテト、言い訳みたいに添えられたカラフルな野菜。それらを上から塗りつぶす茶色い液体。盛り付けのセンスが日本離れしているせいで、なんだか夢を見ている気分になったのだ。架空のステーキを食べている気分になる。
見た目が夢みたいなのに加えて、さらに味もまた夢みたいだった。こちらも夢みたいに美味しい、ではなく、寝るときに見る夢にでてきそうな、という意味で。インドらしくスパイシーな味付けではあるのだが、肉やポテトに芯のところの旨みというか味がなく、まるで肉という情報、ポテトという情報を食っている感覚。夢の中で、脳内で作り出された肉プレートを食べているみたい。
ぴかぴかの店で夢みたいな肉のプレートを食うのは、インドの体験としてはどこか現実感に欠けていて、デパートをVRで再現したらこんなかんじかなとふと思った。夢みたいな現実がみれて満足だ。